今年最後のラオス便が入荷しました
今回は1点狙いのため1種のみの入荷です
存在を知ってからずっと狙っていたツヤクワガタです

上翅の殆どが褐色で僅かにV字の黒色部があります
褐色部については黄色〜濃いオレンジ色と個体差がありますが大体がボーレンホーベンツヤに近い色合いです
♀はモウホツヤpauleiに酷似しています
今回採集した最大個体は79mmです
65mmを越えると長歯個体が目立ち、全体的に中歯個体が少ないのが特徴です
今回は見つからなかっただけでもっと大型は確実にいます
長歯個体の顎は個体差があり、昨日投稿したようなモウホツヤクワガタのように顎が太く横に広くなる個体もいれば
クベラツヤA個体群のように前方にスラッと伸びる個体もいます
ではこのツヤクワガタはどなた?についてですが
見た目だけで判断すれば安南ツヤと言われるモウホツヤクワガタpaulei(または最近提唱されたOdontolabis paulei)ですが
私見では「クベラツヤD個体群」です
まずクベラツヤD個体群と判断した材料ですが
主にビークワ90号を参考にしました
分布域はクベラツヤD個体群であること
種の解説には「モウホツヤクワガタ原名亜種のように上翅の殆どが褐色となる個体、モウホツヤクワガタ亜種pauleiのように黒色部がV字状になる個体が出現する」と記載されています
これは今回の個体と完全に一致しています
また近くのエリア(Sekong、Champasak、Attapeu province)で何回か調査した限り、採集できたのはクベラツヤのみでモウホツヤが確認できていません
更に採集できた♂のうち2個体でクベラツヤB・D・E個体群にみられる翅端で急に角ばる黒色部を持つ個体がいました

翅端で急に角ばる黒色部を持つ個体 Champasakでも同じ柄のクベラツヤD個体群がいる
私の知見不足もあるかもしれませんが、モウホツヤでこのような特徴をもつ個体を見たことがありません
(サンプルを持っている方いたらご連絡ください!)
以上の理由から「クベラツヤD個体群」ではないかと思います
人によってはモウホツヤでしょ!と思られるかもしれませんし
今後モウホツヤになるかもしれませんが
現地で調査している私の現段階での考えは以上の通りです
ただ今回入荷した個体にはクベラツヤD個体群ではなく
「クベラツヤ Savannakhet S型」
として販売します(今後分類が進んだら名称変更します)
この表記は既に市場に出回っているクベラツヤD個体群とのコンタミを防ぐためです
(当店でもChampasak産のクベラツヤD個体群を販売しています)
Savannakhetは採集地の県の名前で「サヴァンナケート」や「サワンナケート」と呼びます
現地の人も色んな発音で呼んでるのでどちらも正しい呼び方のようです
S型については
Savannakhetは面積が広いため同じ県内でも採集地によっては今回入荷した個体とは違うパターンの個体が採集される可能があります
そのため今後Savannakhet内の別産地から入荷した場合に備えて、コンタミを防ぐ意味でscale採集個体のS型と表記しました
今回入荷した個体は小規模の森で採集したものです(産地に拘ったのではなくこの森でしか生息を確認出来ませんでした)
販売者として採集者として、交雑個体を見たくないので変な表記にしました
もう少し違う名前あったろ!だっせぇ!などの突っ込みは傷つくのでおやめください
次に入荷した個体の生態的な特徴について
上述した通りクベラツヤD個体群だと思うのですが
それは外部形態から判断したことで生態は差異が多く
はっきりとクベラツヤD個体群!と決めつけることができません
まず発生時期と生息環境があまりにも異なります
これまでラオス南部でクベラツヤD個体群、ラオス中部でクベラツヤC個体群を年間通じて採集しましたが
どちらの個体群も発生時期は5〜10月で乾季に入るとパッといなくなるクワガタです(ラオスの乾季は11~4月)
実際にクベラツヤ Savannakhet S型の付近のエリアに生息するクベラツヤD個体群は既に発生が終了していました
それがこのクベラツヤ Savannakhet S型は11月から発生が始まります
現地の人からヒアリングしたところ4月くらいまで見るな〜とのこと(信憑性に欠けるのでここは追加の調査が必要)
大陸系のクワガタの殆どが雨季になると発生しますがこの種は乾季になると発生するのか…と謎です
クベラツヤについて海外の文献といくつかの標本ラベルを確認しましたが、発生時期は5〜8月と記載されています(私調べでは)
まぁ、発生時期については深く考察してもイレギュラーな種は沢山いますのでこれ以上考えても無駄かもしれません
(ベトナム北部のゴホンヅノカブトは春発生なのに南部のゴホンヅノprandiiはなんで冬発生なんですか!的な)
生息環境についてはこれまで見てきたクベラツヤは個体群、生息エリアに関係なく
降雨量が多く乾季でも気温が低いエリアに生息するという共通点があるのですが
クベラツヤ Savannakhet S型はなんでそんなところに生息しているの…?と信じられないエリアに生息していました
今まで見つからなかった原因はこれか…と

クベラツヤ Savannakhet S型(左)とChampasak産のクベラツヤD個体群(右)
クベラツヤD個体群との比較写真です
見た目はほぼ同じ、生息エリアも近いのに発生時期と生息環境があまりにも異なるため
本当に同種か?と疑ってしまいます
今後分類が進むことを願っています
(クベラツヤとモウホツヤの分類は地獄だと思いますが誰か本当にお願い致します)
いくつかの個体は冷凍・エタノール処理して
PCR解析できるようプライマーの設計・合成はこちらでやっておきますので
必要な方はご連絡ください(論文化する方限定かつ有償になります)
本当は現地の写真など載せたいのですが、然るべきタイミングで載せるので今回は写真なしです
店舗で本種をご購入の方には特別に現地写真お見せします!
販売個体の値段はこちらの予定です(税抜き表示)
12日㈮の21時ごろにHPにも掲載します!
79mmペア 50,000円
77mmペア 45,000円 ♂B
76mmペア 42,000円
75mmペア 40,000円
75mmペア 40,000円
74mmペア 36,000円♂B
72mmペア 36,000円♂B
66mmペア 26,000円♂中歯♀B
66mmペア 24,000円♂B中歯♀B
今後血の入れ替えがしやすいように全てのペアでシリアルナンバーつきます
今後の入荷についてですが
生息エリアに辿り着くまで車とバイクと船を何度もリレーして到達できる秘境ゆえ未定です
秘境レベルですが現地の人曰く海外の人に会うのは初めてのこと
民族独自の言語を使用しているので、ラオスなのにラオス語があまり通じない(若者が辛うじて話せる程度)という秘境っぷりです
行きに通った橋が崩壊して帰りは筏で川を渡ったりとトラブルだらけで
行きたくても今度はいつ到達できるか不明なので入荷は未定です
個人的に追加調査したいのでまたアタックする予定ですが
上記の理由から最初で最後の入荷になるかもしれませんので
気になる方はご検討いただけますと幸いです
